運営委員長挨拶

 2020年、今年は「東京オリンピック・パラリンピック競技大会」が開幕し、多くの人々が日本を訪れ、アスリート達の熱い戦いにより世界中で歓喜の声が沸き上がる…そんな輝かしい一年であったはずでした。
 2019年12月に、中国武漢市で発症した新型コロナウイルス感染症は、年明けとともに周辺各国へ広がっていきました。
 そして、「COVID-19」と名付けられたこのウイルスは、あっという間に世界を飲み込み、猛威を振るい、多くの人々の命や私たちの暮らしを奪いました。
 それにより、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を始め、予定されていたイベントや行事、花火大会や地域の祭りなど、そのほとんどが中止となりました。
 4月には、政府が緊急事態宣言を発出し、日本中の経済活動が止まり、「ステイホーム」が新しい生活様式のベースになりました。
 そんな中、山形県内の映画館8館も順次休業することを余儀なくされ、約1ヵ月の間、映画が街から消えたのでした。
 その間、鶴岡まちなかキネマが閉館になったことは、残念であり、悔しくて仕方がありません。
 新作映画の公開は見送りとなり、日本中の映画館は暗黒の時代へと突入し、静寂だけが時を刻んでいきました。
 映画製作の分野でも、撮影の中止や映画製作の取り止めなど、日本映画界にとっては、試練の時を迎えたのです。

 山形国際ムービーフェスティバル(YMF)のスタッフ一同、今年の映画祭を開催するか否かを悩み続けました。
 夏になると全国から応募作品が届き出し、応募総数は223本と昨年を凌ぐ勢いとなり、新しく創設した「withコロナ/ショートフィルム部門」にも力作が寄せられました。
 映画の底力を感じた瞬間でした。 
 そして、何よりもこれまでこの映画祭を支えて下さった審査委員、運営委員、特別顧問の皆様からとても強く熱いメッセージを賜り、この度のリアル開催の決定となったのです。

 「今私たちができることは何なのか?」 ―― 映画の灯を消すわけにはいかないのです。

 リアル開催を決めてから招待作品として、黒沢清監督ご来場の下、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞作品の「スパイの妻」の上映が決まりました。
 その他、行定勲監督の「劇場」、大友啓史監督の山形県がロケ地となった「るろうに剣心」、さらには山形が舞台となったグオ・チェンディ監督の「越年 Lovers」では、主演の峯田和伸さんが舞台挨拶をする予定です。
 東日本大震災から来年で10年ということもあり、当時の気仙沼市で撮影された「『優』-「生かされた命」-」では、河瀬直美監督がリモートで参加します。
 エンディングを飾るのは、12月4日全国公開の波多野貴文監督の「サイレント・トーキョー」が全国に先駆けて上映されます。
 素晴らしい招待作品が集まりました。
 また、新人クリエイターの秀作も、是非ご覧いただきたいと思います。
 きっと、この新型コロナウイルス感染症に覆われた世界を払拭する山形国際ムービーフェスティバル(YMF)になると心より願っています。

 「不易と流行」はいつの時代も、その時「生命」が宿る瞬間を表現する上での要諦です。
 まさに映画そのものが、その時代や社会を映す鏡であり、人類が重ねた時間や歴史の分量だけ、時代が映画に要求する視点が多様化することは言うまでもありません。
 こんなコロナ禍の困難な時代も、いつか意味を持つのでしょう。

 今年もまた、多くの皆様と出会い、新しい物語が始まることを願ってやみません。
 最後に、このコロナ禍の折、遠路はるばる東北の奥深い地まで足を運んでいただいた中央でご活躍中の皆様、東北地方でご協力いただいた多くの皆様方に、心より御礼を申し上げご挨拶と致します。

令和2年11月


山形国際ムービーフェスティバル 運営委員長
山形県興行生活衛生同業組合 理事長
株式会社東北ケーブルテレビネットワーク 代表取締役社長
株式会社MOVIE ON 代表取締役社長

吉村 和文

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