運営委員長挨拶

2021年11月12日より3日間に渡って開催される「第17回 山形国際ムービーフェスティバル」。
困難な時代だからこそ、多くの方々のご支援とご協力がありがたく、心より感謝と御礼を申し上げます。

2019年12月に中国武漢市で発症した新型コロナウイルス感染症は、あっという間に世界を飲み込み、2020年、2021年とその猛威は止まることを知らず、多くの人々の命や、私たちの平穏な暮らしを奪っていきました。

私たちの映画業界においても、政府の緊急事態宣言下での映画館の休止や営業時間の短縮などは、経営悪化に直結する事態となり、試練の時を迎えました。さらに昨年の上映延期作品は200作品を超え、今年も約20作品が上映延期となり、観てもらいたい映画が観客へ手渡せない状況が続いています。

2020年の興行収入は、前年比54.9%と大幅に落ち込み、入場人員含めて、日本映画製作者連盟が発足し興行収入の調査・発表を始めた1955年以来、最低の記録となりました。コロナ禍の影響は映画界へ大打撃を与えたのです。
しかし、そんな中でも、今年の後半は新型コロナワクチン接種が進み、また、治療薬の開発等の明るいニュースもあり、少しずつ回復の兆しが見えてきました。
2021年の興行収入は、コロナ禍前と比べて、7割近くまで回復するのではないかと言われています。

今年の山形国際ムービーフェスティバルのコンペティション部門には、応募総数246本と昨年を凌ぎ、力作が多く寄せられました。コロナ禍による混沌とした世情の中で、そういう時代だからこそ生まれる作品も多く、若きクリエイターや監督の皆さんの才能の一端を感じました。是非、表彰式やグランプリ上映等をご期待ください。

招待作品としては、昨年の黒沢清監督の「スパイの妻」の上映に続き、カンヌ国際映画祭などで高い評価を得た、濱口竜介監督を特集上映いたします。今年のカンヌ国際映画祭で日本映画史上初となる脚本賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」と、同じく2018年の同映画祭のコンペティション部門に出品された「寝ても覚めても」の2作品を続けて上映します。
また、今年のカンヌ国際映画祭「カンヌ・プルミエール」部門に日本映画として唯一選出され、今年7月の公開以来大ヒットを記録している細田守監督の「竜とそばかすの姫」、佐藤健さん主演の大ヒットシリーズの最終章として今年2作品連続で公開された大友啓史監督の「るろうに剣心 最終章 The Final」、また、【恐怖の村】シリーズ第2弾、ホラー作品として大ヒットを記録した清水崇監督作品の「樹海村」と、今年話題の3作品を上映します。 さらに行定勲監督をはじめ、世界的に活躍しているアジアの気鋭監督3名によるオムニバス映画「アジア三面鏡 2016:リフレクションズ」、小川洋子さんの原作を台湾を舞台に映画化した奥原浩志監督の「ホテル・アイリス」の上映、そしてYMFの審査委員長の村川透監督作品で、数々の話題を生んだ松田優作さん主演の「蘇える金狼」が約40年の時を超えてスクリーンに帰ってきます。
永野CHANNELのムービー版「永野 CHANNEL the MOVIE ~音楽の絆~」は特別上映作品として上映します。
地元山形からは、YMF2005スカラシップ作品を製作した佐藤広一監督作品で、山形国際ドキュメンタリー映画祭の懇談会場であった「香味庵クラブ」の丸八やたら漬けのドキュメンタリー「丸八やたら漬け Komian」も上映が決定しました。

「不易と流行」はいつの時代も、その時「生命」が宿る瞬間を表現する上での要諦です。
まさに映画そのものが、その時代や社会を映す鏡であり、人類が重ねた時間や歴史の分量だけ、時代が映画に要求する視点が多様化することは言うまでもありません。
こんなコロナ禍の困難な時代も、いつか意味を持つのでしょう。

今年もまた、多くの皆様と出会い、新しい物語が始まることを願ってやみません。
最後に、このコロナ禍の折、遠路はるばる東北の奥深い地まで足を運んでいただいた中央でご活躍中の皆様、東北地方でご協力いただいた多くの皆様方に、心より御礼を申し上げご挨拶と致します。

令和3年11月


山形国際ムービーフェスティバル 運営委員長
山形県興行生活衛生同業組合 理事長
株式会社東北ケーブルテレビネットワーク 代表取締役社長
株式会社MOVIE ON 代表取締役社長

吉村 和文

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